相続登記の申請の義務化とはどういうことなのか?

所有者不明土地とは、①不動産登記簿により所有者が直ちに判明しない土地、②所有者が判明しても、その所在が不明で連絡が付かない土地とされていますが、このような土地は、公共事業や民間事業による利用を阻害し、長期間管理されずに荒廃を招くなど、様々な支障を生じさせています。所有者不明土地の面積は2016年には 410万ha、九州の面積 368万haより多いという調査結果が出ています。
それは人口減少と高齢化を背景に、今後増加することが見込まれていて、2040年には北海道本島の面積に匹敵する720万haに達すると推計されています。
そのため、所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直しとして、「民法等の一部を改正する法律」及び「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」が令和3年4月21日に成立し、同月28日に公布されました。
両法律は、所有者不明土地の増加等の社会経済情勢の変化に鑑み、所有者不明土地の「発生の予防」と「利用の円滑化」の両面から、総合的に民事基本法制の見直しを行うものとされています。
ここでは、相続登記の申請の義務化に限定して取り上げ、説明することとします。
不動産登記法は、「発生の予防」の観点から改正され、これまで任意とされていた相続登記や住所等変更登記の申請を義務化しつつ、それらの手続の簡素化・合理化策をパッケージで盛り込むこととされています。
なお、施行期日は、原則として公布後2年以内の政令で定める日(相続登記の申請の義務化関係の改正については公布後3年以内の政令で定める日、住所等変更登記の申請の義務化関係については公布後5年以内の政令で定める日)とされています。 

相続登記とは

相続登記とは、相続、遺産分割、遺贈による所有権の移転の登記等を広く念頭に置いているとされています。
しかし、これまでは、上記のいずれの相続登記の申請も、義務とはされていませんでした。

相続登記の申請の義務化の背景

不動産登記制度は、私人間における不動産取引の安全を確保するとともに、不動産の権利関係を公的に記録し、それを公示する機能も併せ持っています。
このような不動産登記制度を実現するためには、実体関係が正しく公示されていなければなりません。
我が国の不動産登記制度は、対抗要件主義に立っていますので、登記がなければ第三者に権利が対抗できないため、対抗要件主義は、正しく公示する動機づけとなっています。しかし、登記がなくても物権変動が対抗できる場合は、この動機づけが働きません。
相続は、まさに登記がなくても対抗できる場面であり、相続登記の申請をしなくても、不利益を被ることが少ないため、登記をする動機づけが働きにくいといえます。
このような現状では、高齢化の進展による死亡者数の増加等により、今後ますます深刻化するおそれがあり、所有者不明土地問題の解決は、喫緊の課題とされたのです。

相続登記の申請の義務化

相続登記の申請の義務化の主な内容は、下記のとおりです。

相続等による所有権の移転の登記の申請

所有権の登記名義人が死亡し、相続等による所有権の移転が生じた場合における公法上の登記申請義務について、主なものとしては、次のような規定が新設されました。

⑴「遺産分割の有無にかかわらず、相続による不動産所有権の取得について、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から3年以内に登記すべき」と規定されました。相続人の相続登記の申請の義務を規定したものです。
なお、遺産分割がされた場合には、当該遺産の分割の結果を踏まえた相続登記の申請をすることで、申請義務が履行されたこととなります。ただし、3年以内に遺産分割協議がまとまらなそうな場合には、期限に間に合わないということもあり得ますので注意が必要です。
また、遺産の分割がされる前であっても、法定相続分での相続登記の申請をした場合にも、相続による所有権の移転の登記の申請義務が履行されたこととなります。

⑵次に、「法定相続分での相続登記による所有権の移転の登記がされた後に遺産の分割があったときは、当該遺産の分割によって当該相続分を超えて所有権を取得した者は、当該遺産の分割の日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。」と規定されました。遺産分割が終わったら3年以内に登記をすることを法律で義務づけたものです。

相続人申告登記の新設

「相続人申告登記」という制度が新しく作られました。これは、不動産を相続した人が法務局の登記官に対し「私が不動産の相続人です」と申し出て登記してもらう制度です。
上記のとおり、改正法のもとでは、不動産の所有者となったことを知ってから基本的に3年以内に相続登記しなければなりませんが、遺産分割協議が終わっていないなどの事情により、相続登記をするのが難しいケースもあるでしょう。
そこで、先に「自分が相続人です」と法務局に申請することにより、上記の義務を履行したことにしてもらえるのが、相続人申告登記制度です。
相続人申告登記の申請があると、登記官はその不動産の登記に申出人の氏名や住所などの情報を付記します。この時点では正式な相続登記ではありません。
その後、遺産分割協議などを行って相続人が確定した場合、その日から3年以内に正式な相続登記(名義変更)をすれば相続人は義務を履行したことになります。
相続人申告登記の具体的な申請方法について詳細は未定ですが、相続人が単独で申請できて添付資料も簡易なものとなる見込みです。正式な相続登記より負担が軽くなるので、すぐに相続登記ができない場合には、相続人申告登記を、ということになるでしょう。

遺贈による所有権の移転の登記手続の簡略化

今までは、遺言があったとしても、遺言執行者が指名されていない場合は、原則的に遺言者の相続人全員が登記義務者として関与しなければならず、相続人が遠方な場合や、相続人が多数であるような場合には、家庭裁判所に遺言執行者を選任してもらうことも検討する必要がありました。このような手続を簡略化するため、法63条3項は、「遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)による所有権の移転の登記は、60条の規定にかかわらず、登記権利者が単独で申請することができる。」と規定され、相続人に対する遺贈に限り、遺贈を受け取る者だけで登記ができることになりました。

相続登記等の申請義務違反の効果

上記のような相続登記等の登記申請義務違反の効果としては、過料が定められており、「申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、10万円以下の過料に処する。」と規定されております。

まとめ

土地の所有者が死亡しても、相続登記がされない等を原因として、不動産登記簿により所有者が直ちに判明せず、又は判明しても連絡がつかない所有者不明土地が生じ、その土地の利用等が阻害されるなどの問題が生じている現状から、相続等による所有者不明土地の発生を予防するための仕組みとして、相続登記の申請を土地所有者に義務づけることとされたのです。これが相続登記の申請の義務化の本質なのです。
相続登記の申請の義務化関係の施行期日は公布後3年以内ですが、相続問題は、誰の身にも起こることですので、あらかじめ検討しておくことも無駄ではなく、疑問がある場合には、専門家のアドバイスを受けるのが望ましいといえましょう。

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