家を相続放棄するには?2023年法改正も踏まえた基礎知識
相続には多くの手続きや注意点が伴います。本記事では、家の相続放棄を考える際に押さえておくべき基礎知識や、2023年の法改正によるポイントを分かりやすく解説します。
相続放棄は、メリットだけでなくデメリットもあるため、手続きの流れや管理義務に関するリスクをしっかり理解し、必要に応じて専門家に相談することが大切です。
特に2023年4月の民法改正によって、相続放棄者の管理義務(保存義務)の範囲が明確化されました。最新情報を踏まえ、トラブルを回避するためのポイントを詳しく見ていきましょう。
そもそも相続放棄とは
まずは相続放棄そのものの仕組みや、単純承認・限定承認との違いを確認しましょう。
相続放棄とは、プラスの財産だけでなくマイナスの財産も含む一切の相続権を放棄する手続きです。相続人は、相続が開始したことを知った日から3ヵ月以内の熟慮期間中に相続放棄を行うかどうかを決めることが必要となります。
相続には自由に財産を受け取ることができる単純承認、相続財産の範囲内で負債を引き受ける限定承認、そして一切の相続を放棄する相続放棄の3つの方法があります。それぞれにメリット・デメリットが存在するため、状況に応じて選択しましょう。
従来、相続放棄を行った後も家の管理義務やトラブル対応が求められるケースがありましたが、法改正によって管理義務は『現に占有している者』へ限定されるなど、取り扱いが整理されています。
単純承認・限定承認・相続放棄の違い
単純承認とは、被相続人の財産をすべて受け継ぐことを指し、プラスの財産だけでなくマイナスの財産もそのまま相続する方法です。負債が多い場合でも原則として責任を負うため、大きなリスクを伴うことがあります。
限定承認は、相続財産の範囲内でのみ負債を引き受けるため、相続後に不測の借金が出てきても個人の財産を超えて責任を負うことを避けられる点が特徴です。ただし手続きが複雑であるため、専門家への相談が望ましいでしょう。
相続放棄は、すべての財産や義務を引き継がない方法です。資産を引き継げない反面、負債の負担も免れられます。家や不動産が大きな負担になる場合には有効ですが、相続するメリットも失われることに注意が必要です。
家や不動産だけを相続放棄することは可能か
民法上、相続は原則として一括で受け継ぐか、または全てを放棄する形が基本です。一部の財産だけを放棄することはできないため、家や不動産だけを単独で放棄する手段はありません。
ただし、遺産分割協議によって他の相続人に家を渡し、自分は他の財産を相続する仕組みにすることは可能です。相続人同士の合意が得られれば、家を実質的に引き継がないようにするケースもあります。
家の維持費や税負担が大きい場合は、限定承認を検討したり、家自体を売却して現金化するなどの選択肢を併せて考慮することが大切です。
相続放棄する手続きと期限
相続放棄には期限が定められており、必要書類や費用が発生します。正しい手順を把握しておきましょう。
相続放棄は、家庭裁判所への申述によって正式に行います。その際、必要書類の不備や提出期限を過ぎると放棄できなくなるため、事前の準備が重要です。
期限をしっかり守ることはもちろん、戸籍謄本や被相続人の住民票除票などを取り寄せておくとスムーズに手続きできます。費用としては印紙や郵便切手が必要になりますが、金額はそこまで大きくありません。
もし相続放棄が認められた後に他の相続人も放棄した場合は、財産の管理が行き先不明となる恐れがあります。必要に応じて相続財産清算人の選任手続きも視野に入れましょう。
相続放棄の期限は3ヵ月:『熟慮期間』とは
相続が開始したことを知った日から3ヵ月以内に相続を受けるか放棄するかを選択できる期間が、熟慮期間です。この期間を過ぎると単純承認をしたとみなされ、相続放棄ができなくなるため注意が必要です。
熟慮期間の延長を希望する場合、正当な理由があれば家庭裁判所への申立てによって延長が認められるケースもあります。とはいえ、延長が必ず認められるわけではないため、早めに方針を決めることが大切です。
家の修繕や固定資産税の負担が大きい場合などは熟慮期間中に専門家と相談し、相続放棄の手続きを進めるかどうかを慎重に検討しましょう。
相続放棄に必要な書類と提出先
相続放棄の申述には、被相続人の死亡が記載された戸籍謄本、申述人の戸籍謄本、被相続人の住民票除票や戸籍の附票などの書類が必要です。家族構成が複雑な場合はさらに書類が増えることもあります。
提出先は被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。書類の不備や漏れがあると放棄が認められない場合があるため、正確に準備しましょう。
相続人全員分の書類が必要になるケースもあるため、相続人間で連携しつつ、専門家のサポートを得るとスムーズに手続きが進みやすくなります。
相続放棄の費用と申述の流れ
相続放棄の費用は裁判所に納める収入印紙と郵便切手代が中心で、数百円から数千円程度に収まることが多いです。法律専門家に依頼する場合は、その報酬も考慮しなければなりません。
手続きの流れとしては、必要書類の収集→家庭裁判所への提出→裁判所からの照会回答→相続放棄の受理通知の順に進みます。問題がなければ審理期間はそれほど長くかかりません。
申述が受理されれば、その後は相続分に基づく一切の権利と義務を引き継がないことが正式に確定します。もっとも、家の管理責任が完全に免除されるわけではないため、法改正の内容を理解しておきましょう。
家の相続放棄を選択するメリット・デメリット
相続放棄を行うと、負担を回避できる一方で得られるはずの資産も放棄することになります。慎重な比較検討が大切です。
家のみの相続放棄は基本的にはできません。
相続放棄によってマイナスの財産を引き継がずに済む点は大きなメリットです。維持管理が難しい家や老朽物件の処理を回避できるため、後々のトラブルを避けられるでしょう。
ただし、本来得られるはずの資産までも手放すことになるため、物件の売却益や将来的な利用価値を失う可能性があります。家族や利害関係者とよく話し合い、必要に応じて収支シミュレーションを行いましょう。
また、相続放棄後も一定の保存義務が課される場合があるため、完全に手離れがいいとは限りません。費用負担や管理責任とのバランスを見極めることが大切です。
維持費や固定資産税などの負担を回避したい場合
家や不動産を持つと、固定資産税や管理費、修繕費などのコストがかかります。特に空き家や老朽物件の場合、家屋の老朽化対策にも多額の費用がかかることがあるでしょう。
こうした負担を一挙に避けたい場合、相続放棄をすることで将来的なトラブルや経済的負担を減らす選択肢が得られます。
ただし、家に住み続ける予定や賃貸に出す計画がある場合は、相続放棄による不利益も大きくなるため、慎重に選ぶほうが良いでしょう。
マイナス財産とプラス財産が混在するケース
相続財産の中には、価値ある土地や預貯金などのプラス財産と、借金や修繕費用のようなマイナス財産が含まれている場合があります。すべてを相続すると、借金が発覚したときに大きな負担を背負うリスクがあります。
限定承認を選べば、プラスの範囲内でのみ負債を弁済することができるため、ある程度リスクをおさえることができます。ただし手続きが複数人にわたる場合は、相続人全員の合意を得る必要があります。
マイナスとプラスのバランスをどのように見るかは、相続後の状況を左右する重要なポイントです。専門家にシミュレーションをしてもらうと有益でしょう。
売却困難な『負動産』を抱えるリスク
過疎化した地域の不動産や老朽物件など、需要が少ないため売却が難しい物件は『負動産』と呼ばれることがあります。これらを相続すると、維持費や管理費を負担するだけでなく、不要なトラブルに巻き込まれるリスクもあります。
相続放棄をすることで、売却の目処が立たない物件を引き継ぐリスクを回避することが可能です。特に買い手がつかない空き家などは、所有するメリットが見出しにくい場合も多いでしょう。
ただし完全に負動産を手放すには、相続人全員が放棄をした後、相続財産清算人が手続きを進めるなどのプロセスが必要となります。ケースによっては時間と手間がかかる点に留意しましょう。
相続放棄した家はどうなる?
相続放棄した家の所有権はどのように移行し、その後どのように扱われるのでしょうか。
相続放棄を行うと、自分が相続人としての権利を失う代わりに、その家を管理・処分する権限も放棄することになります。ただし他の相続人が相続すれば、その方との話し合いによる処分も考えられます。
誰も相続しなかった場合、最終的に相続財産清算人が選任され、家の処分や費用の清算が行われます。まれにすべての相続人が放棄して所有者不明となるケースもあり、維持管理が社会問題化している地域もあります。
管理責任を免れたい場合でも、実際に家を占有していると『保存義務』として一定の管理責務を負う場合があります。法改正によって範囲が限られたとはいえ、周囲に迷惑をかけないための対策は必要です。
次順位の相続人への相続権移行
相続には順位があり、先順位の相続人が放棄をすると次順位が繰り上がって相続する権利を持つようになります。例えば子が放棄すると、代わって被相続人の親が相続するケースなどが考えられます。
次順位の相続人はプラスの財産だけでなくマイナスの財産の可能性も引き継ぐため、よく状況を把握して判断することが必要です。
放棄したい気持ちはあっても、相続放棄の手続きを知らずに期限を過ぎる場合もあるため、相続開始の連絡を受けたら速やかに情報収集や専門家への相談を行いましょう。
相続人全員が放棄した場合の処理の流れ
相続人全員が放棄を行うと、その家を引き継ぐ人がいなくなります。そうなると家庭裁判所が選任する相続財産清算人が現れ、家の処分や負債の精算を行うことになります。
清算人は家を売却して得た代金で負債を清算し、残余財産を国庫に帰属させるのが一般的な流れです。もし売却ができない場合は、さらなる手続きや社会的な取り組みが求められることもあります。
全員放棄によって一時的に責任を免れるように見えますが、相続放棄時点で家を占有していた人には保存義務が発生する可能性があるため、危険性や費用負担を把握しておく必要があります。
相続土地国庫帰属制度とは
2023年4月より始まった相続土地国庫帰属制度は、相続による不要な土地の管理リスクを減らすために設けられた制度です。ただし、家屋が建っている土地をそのまま国庫に帰属させるには厳しい要件があり、実際には受理されないケースも多いとされています。
ほかにも、境界が不明確な場合や土地が深刻な汚染を抱えている場合など、国庫帰属が認められにくい条件がいくつかあります。事前に調査をして要件を満たす必要があるでしょう。
相続放棄を選択した後、国庫帰属によって土地を完全に手放すまでにはまだ手続きが残るので、煩雑に感じる場合は弁護士などの専門家と同時進行で進めることが望ましいです。
管理義務・保存義務と2023年法改正のポイント
2023年4月の法改正によって、相続放棄者の管理義務(保存義務)の範囲が明確化されました。具体的な変更点を見ていきましょう。
従来の民法では相続放棄をした場合でも、その財産を管理しなければならない責任がどこまで及ぶか明確でない側面がありました。改正後は、現に財産を『占有している者』が保存義務を負うと規定され、責任の範囲が明確に区分されています。
管理(保存)義務は、相続放棄者がやむを得ず家に住んでいるなど、占有状態にある場合に発生します。財産を放置し、周囲に損害を発生させるリスクをなくすための責務として重要な意味があります。
この法改正により、相続放棄後は速やかに財産の引き渡しや清算人への連絡を行えば、不要なトラブルを軽減できます。逆に放置すると管理責任を問われる可能性があるため注意が必要です。
「現に占有している者」の定義と注意点
改正民法では『現に占有している者』とは、財産を物理的・実質的に管理している人と解釈されます。相続放棄者であっても家に残っている場合は占有者と見なされる可能性が高いでしょう。
例えば空き家であっても、荷物をそのまま置いていたり、定期的に維持管理をしていると占有と判断される場合があります。占有している以上、外壁の補修や倒壊防止措置などを怠れば損害賠償責任を問われるリスクがあります。
相続放棄を行うならば、速やかに物件から退去し鍵を返却する、または相続財産清算人の管理下に委ねるなどの対応が望ましいです。
管理(保存)義務を怠った場合のリスク
法改正後は、占有している者が家の保存義務を負うため、老朽化が進んで近隣に被害を与えた場合などは賠償問題に発展する可能性があります。
台風などの天災で家屋の一部が飛ばされて周囲の建物に損害を出した場合、適切な補修をしていなかったと判断されれば管理不十分として損害賠償責任を問われることもあります。
多くの場合、相続放棄を検討しているか否かにかかわらず、家の維持管理に要するコストとリスクは無視できません。法的責任を回避するためには、放棄後の行動指針も考慮に入れる必要があります。
相続財産清算人への引き継ぎ
相続放棄を行うと、他の相続人がいる場合はその人に管理責任が移ることがあります。全員が放棄した場合、家庭裁判所を通じて相続財産清算人が選ばれ、財産の処分や負債の整理を行います。
相続財産清算人が選任されると、家の管理や売却などは原則として清算人が担うため、相続放棄者の管理義務は限定的になります。
ただし、清算人が正式に就任するまでの間は占有者として保存義務を負う可能性が残るため、選任の申し立てを早めに行い、管理責任の引き継ぎについても明確にしておくべきです。
相続財産清算人の選任と役割
相続財産清算人は、相続人が全員放棄したケースや、管理が難しい場合に重要な役割を果たします。
相続人がいないあるいは全員が相続放棄をした場合、本来は相続する人がいなくなった家や土地を放置するとさまざまな問題が生じます。そこで、家庭裁判所が選任するのが相続財産清算人です。
清算人は家や土地の管理や処分、負債の支払いなどを一任される立場で、放置されがちな財産を整理することで周囲への悪影響を最小限に抑えます。
清算人の存在は相続放棄者にとっても重要で、放棄後の管理義務を早期に引き継いでもらえるため、手間やリスクを軽減できる利点があります。
申し立て手続きと必要費用
相続財産清算人の選任を申し立てるには、相続放棄の事実を証明する書類や、不動産の位置・内容を示す資料を揃えて家庭裁判所に申立てを行います。費用としては収入印紙代や郵便切手代が必要です。
弁護士などが清算人の候補者となることが多く、専門家に依頼すると手続きがスムーズな反面、報酬が発生する点は考慮が必要です。
清算人がいないと、相続放棄した物件の処分が進まず、結果的に近隣トラブルや賠償リスクを招く恐れがあるため、早めの対応が大切です。
相続財産清算人が担当する業務
清算人は、まず財産の現況を調査し、売却可能な不動産や動産を把握して資金化を進めます。そのうえで負債があれば返済に充て、残った財産は最終的に国庫へ帰属させることになります。
また、清算人は不動産の管理・処分にも責任を負うため、空き家であれば適切な対策を講じ、倒壊などの危険がある場合は解体や修理を検討します。
相続財産清算人の活動によって、相続放棄者は不要な管理義務から解放される場合が多い反面、清算には時間がかかることもあるため、早めの依頼と情報共有が重要です。
相続放棄後の家に住み続けることは可能?
相続放棄しても家を利用したい場合はあるでしょう。法的な観点からどのような条件があるのかを解説します。
相続放棄を行うと、基本的には家に対する権利をすべて失うため、勝手に住み続けることは難しくなります。しかし現に占有している場合は保存義務が生じるため、家を利用する形で管理を続ける人もいます。
ただし、法的には相続財産を他者へ返還すべき立場にあるため、長期的に居住するなら他の相続人や清算人と話し合い、契約関係を結ぶなどの対応が必要です。
占有状態を続けると、修繕費や損害賠償責任を回避できないリスクがあります。相続放棄でマイナス財産を避けたい意図があるのであれば、住み続ける選択には慎重な判断が求められます。
保存義務の範囲と住み続けるリスク
相続放棄者が現にその家に居住している場合、修繕や安全管理など最低限の保存措置を行う義務があります。これは自分自身のためというより、周囲への被害を防ぐ観点が大きいです。
家に住み続けるということは、事実上その物件を使い続ける状態になるため、家屋が原因で第三者に損害が発生した場合、損害賠償の責任が問われる可能性があります。
最終的に相続財産清算人が管理・処分を行うとき、住み続けている人との間でトラブルになることもあるため、早めに話し合いを持つことが大切です。
限定承認を活用する方法
家を手放したくない一方で、大きな借金は抱えたくないという場合は、限定承認を検討する余地があります。限定承認であれば、相続した財産の範囲内のみで債務を弁済すればよいので、家を保持できる可能性があります。
ただし、限定承認の手続きには相続人全員の同意が必要であり、複数の相続人がいる場合は合意形成が難しいこともあります。
家の価値や負債総額によっては限定承認が得策となったり、逆に保有リスクが高すぎたりとケースバイケースです。専門家の意見を取り入れるとよいでしょう。
相続財産清算人から買い戻す選択肢
相続放棄後、相続財産清算人が家を売却する際に、買い手として自分が名乗りを上げるという方法があります。法的には一旦相続を放棄した形になりますが、その物件を改めて購入するイメージです。
この場合、市場価格に基づいて売買されることが一般的で、相続放棄による免責を得ながら家を手に入れたい人には選択肢の一つといえます。
ただし、買い戻す際には資金負担が必要となり、他の購入希望者が現れる可能性もあることから、確実に取得できるとは限りません。応募のタイミングや清算人との折衝が重要です。
家の相続放棄に関するよくある質問
家を相続放棄した場合に生じやすい不安や疑問をQ&A形式でまとめました。
相続放棄を行っても完全に負担がなくなるわけではないのか、相続放棄後に誰が費用を負担するのかなど、よくある疑問を整理します。
法改正後は管理義務が『現に占有している者』に限定されるため、相続放棄者が速やかに退去しないと保存義務を負う可能性がある点は特に気をつけましょう。
ここでは代表的な質問への回答を簡潔にまとめていますが、具体的な状況に応じては専門家に確認するのが最適です。
相続放棄後に家の解体を求められた場合の対処法
老朽化した家屋が周囲に危険を及ぼすと判断された場合、自治体や近隣住民から解体を求められることがあります。相続放棄者が占有していると見なされる場合は保存義務を負い、解体費用を負担するリスクもあります。
解体が避けられないときは、相続財産清算人に管理を引き継ぐか、専門家を通じて自治体と協議するのがスムーズです。解体や撤去費用を誰が最終的に負担するかについても、相続放棄前に検討しておきましょう。
放棄後に負担を一切負いたくない場合は、なるべく速やかに占有状態を解消し、清算手続きに移行することが現実的な選択肢となります。
被相続人の滞納家賃や修繕費は誰が負担する?
被相続人が生前に滞納していた家賃や修繕費は、原則として相続財産から支払われるべき費用です。相続人が家を相続するのであれば、負債も一緒に引き継ぐ可能性があります。
相続放棄をすれば、滞納分も含めて支払い義務を免れることができます。ただし、放棄後も自分が家を占有して住み続ける場合は、事実上、新たな賃貸契約が必要になるなど別の義務が生じるかもしれません。
相続財産清算人が選任されれば、清算人が被相続人の残債を一括処理しますが、相続放棄者が個人的に負担する義務は原則としてなくなります。
2023年4月より前に相続放棄した場合はどうなる?
2023年4月の法改正は、相続放棄者が負う管理義務を『保存義務』として明確化し、かつ対象を『現に占有している者』に限定した点が大きなポイントです。改正前に相続放棄した場合でも、新法の趣旨に沿って考慮される傾向にあります。
ただし、改正前にすでに相続放棄が認められ、その後も家を占有し続けている場合は、旧法と新法の解釈が交錯する可能性があります。個別の状況によって対応が変わるため、トラブル防止には専門家のアドバイスが望ましいです。
法律の遡及や適用範囲はケースバイケースです。過去に放棄手続きを済ませていても、その後の占有状態や社会情勢によって違いが生じるため、注意してください。
まとめ|家の相続放棄で迷ったら専門家に相談を
家の相続放棄は複雑な法律や手続きが絡むため、疑問点があれば早めに専門家へ相談し、最善策を検討しましょう。
家を相続放棄するにあたり、法定の期限や必要書類、管理義務の範囲など多くのポイントがあります。特に2023年4月の改正によって『現に占有している者』が管理責任を負うルールは明確化した一方、占有状態が続くと予想外のトラブルに巻き込まれるリスクも残ります。
相続放棄はマイナス財産を回避できる有効な選択肢ですが、価値ある家や土地の相続というメリットを失う側面もあるため慎重な判断が必要です。特に複雑な財産状況や相続人間の意見対立がある場合は、弁護士や司法書士の力を借りると円滑に進めやすくなります。
不動産の相続は長期的な視点が大切です。将来的な売却や使用の可能性まで踏まえ、家をどう扱うかを検討し、必要に応じて専門家と相談しながら最も適切な道を選びましょう。