成年後見制度における「後見人」は家族がなれるの?役割や仕事、報酬や制度上の問題点について

日本はすでに超高齢社会となっており、体力や判断能力が落ちてしまった高齢者の方を国全体でどう支えるかが問題となっています。

私たち一人一人の国民単位でも、高齢となった自分の親ができるだけ生活で不便を感じないように、また詐欺や事件などに巻き込まれないように見守っていかなければなりません。

高齢者を法的に支援する仕組みとしては成年後見制度があり、判断能力が落ちた要支援者を「成年後見人」が手助けするものです。

本章では概ね50代以降で高齢のご両親のサポートを考えている方を想定し、成年後見制度を紹介するとともに現状の問題点についても考察していきます。

成年後見人とは?役割や仕事について

成年後見制度の中身としては後見・保佐・補助という3つの支援類型があり、それぞれ以下のような違いがあります。

支援の類型後見保佐補助
支援が必要な人
(本人)の呼び方
被後見人被保佐人被補助人
支援する人の呼び方後見人保佐人補助人
本人の判断能力
の低下度合い
判断能力を欠く判断能力が著しく不十分判断能力が不十分
支援の程度強い中等度弱い

上で見るように、本章のテーマである「後見人」は本人の判断能力の低下度合いが強く、最も手厚い支援を要するケースで用いられます。

「判断能力を欠く」成年被後見人は、日常生活で自分に必要となる契約などの法律行為を有効に行えない状態で、後見人は被後見人の生活全般にわたる法律行為をサポートするのが任務になります。

後見人は大きく以下のような職務を担います。

①財産管理に関する事務

本人の財産状況を把握し、各種契約の締結・不動産に関する管理などを行います。

②身上監護に関する事務

病院での治療や入院する際の契約、介護に関する契約の手配などを行います。

③家庭裁判所に対する報告

年に一回程度、後見事務について定期的に家庭裁判所に報告します。

家庭裁判所は必要に応じていつでも後見事務について報告を求める権限があるので、これに応じられるように資料等を準備しておく必要があります。

なお、被後見人は判断能力が低下しているので、不必要な契約に応じてしまい経済的な損害を被る危険があります。

そのため日用品の購入など、ごく身近な取引を除いて、後見人は被後見人が行った不必要な契約を取り消すことができる強い権限を有します。

強い支援を実現させるため、強い権限が付されているということです。

家族が後見人になれるとは限らない

成年後見制度は高齢者を支援する公的な制度として一定の役割を果たしますが、実は色々と問題もあり、使い勝手が悪いことやご家族の方に不利益が生じる可能性もあるので、積極的にお勧めしない専門家も多いのが実情です。

ひとつは、後見人が誰になるのかは家庭裁判所に決定権があり、必ずしもご家族の方が後見人となれるわけではありません。

普通、高齢となった親を身近で見ているお子さんなどが必要性を感じで成年後見制度を検討することが多いのですが、「自分が(あるいは兄弟などが)大切な父や母の面倒をみたい」と考えることが多いでしょう。

家庭裁判所で申し立ての手続きをする際には後見人となる人物について家族や親族を推薦できるのですが、家庭裁判所はこれに拘束されず、あくまで支援を要する本人の保護を最優先に考えて後見人を選任します。

本人保護を優先した結果、外部の弁護士など職業専門家が後見人に就任することもあり、その場合は基本的に被後見人が死亡するまで後見人に対する報酬の支払いが必要になります。

職業後見人の報酬は大体月額2万円~4万円程度、本人の財産が5千万円を超える場合は5万円~6万円程度かかります。

さらに、難度の高い後見事務を行った場合は付加報酬として増額されることもあります。

  • 後見人を誰にすべきか親族間で意見が対立している
  • 要支援者本人が親族を後見人に選任することについて反対している
  • 後見人候補者が健康上の問題を抱えている、あるいは多忙である
  • 後見事務に関して専門性の高い課題があると見込まれる
  • 遺産分割協議など、後見人候補者と本人との間で利益の相反(利害の対立)が予定される

以上のようなことが認められると、家庭裁判所は親族後見人を指定せず、外部の専門家を後見人に起用する可能性が高くなります。

そしてその際の大きな問題は、親族後見人となるか外部の第三者が選任されるかは申し立ててみないと分からず、申し立てた結果誰が選ばれても、申立ての取り下げや、選ばれた後見人が就任することを拒否することができないということです。

親族後見人には監督人が付くことも

仮に、家族など身近な親族後見人が選ばれたとしましょう。

この場合、報酬に関しては後見人が家庭裁判所に報酬付与の申し立てをしなければ実質的に後見人の報酬は不要となります。

親族後見人であれば家族の面倒を見るのは当然と考えて、無報酬で後見事務を行う人が多いようです。

では運よく家庭裁判所が親族後見人を選んでくれればそれで安心かというと、そうではありません。

親族後見人が選ばれた場合、後見人を監督する「後見監督人」を家庭裁判所が選任することがあるからです。

後見監督人は主に、後見人が正しく後見事務を行っているかどうか監督し、不正行為が無いように見張る役目を負っています。

後見監督人が選ばれた場合、後見人は後見業務に関する報告書を作成し、後見監督人に定期的に報告する義務を負います。

定期報告以外にも必要と判断した時に、後見監督人はいつでも後見人に事務の報告を求めることができます。

もし後見人が正しく業務を行っていない、又は不正行為等があると判断すれば、家庭裁判所に対して後見人の解任を請求することもできます。

後見監督人が選任されるかどうかは家庭裁判所が判断するので、これも申し立ててみないと選任されるかどうか分かりません。

以下のような事由があるケースでは選任される可能性が高くなります。

  • 家族や親族が後見人となった
  • 被後見人の流動資産が概ね1000万円以上ある
  • 親族内に後見人となった者に対して反対意見がある
  • 後見人が高齢である
  • 後見事務を滞りなく行えるか、後見人が不安に思っている
  • 遺産分割などで成年被後見人と後見人に利益相反が予定される

根底にある考え方として、親族は身近であるがゆえに財産の横領なども考えやすいので、これを監視する必要があると裁判所はみています。

そのため、後見人が親族になる場合や本人の財産の額が大きい場合、後見監督人を設定して後見人の不正行為を監視、牽制したいという意図があるわけです。

あくまで本人や本人の財産の保護を最優先で考えるため、後見監督人はほとんどのケースで外部の弁護士などの専門家が起用されます。

親族を監視する以上、第三者的目線で対応できる人材が必要なことから外部人材となるのは仕方がないとも言えますが、その場合やはり費用がかかります。

後見監督人の報酬は本人の財産の額などにもよりますが、概ね月額1万円から3万円程度かかり、基本的には被後見人が死亡し後見事務が不要となるまで支払いが続きます。

親族が後見監督人を解任することも自由にはできないので、費用面の負担や心理的な軋轢が生じやすく、ご家族にとっての負担になります。

まとめ

本章では成年後見制度における「後見人」の役割や仕事、また今の制度上で見られる後見人を巡る問題点などについて見てきました。

成年後見制度は判断能力が低下した高齢者等を支援、保護する制度として機能します。

しかし実際に自分が後見人になって親の面倒を見ようかと考えている人にとって、確実に自分が後見人になれるわけではないことや、なれたとしても後見監督人が選ばれる可能性があるということは大きな不安材料です。

実際のケースを見て家族関係等を考慮し、成年後見制度を利用した場合に親族が後見人になれそうか、また後見監督人が選任されそうかどうかは、制度に詳しい司法書士に相談するとある程度推測できることもあります。

当センターは、成年後見の申立てについても数多くの実績があります。

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